英日翻訳者として収入を得るようになって、2021年で9年目を迎えます。
翻訳者志望の人と話すと「TOEICって受けました?何点ですか?」と聞かれることがあります。質問の意図を聞くと、翻訳者になるのにTOEICは必要なのか知りたいとのこと。
結論から言います。TOEIC900点以上はあった方がいいです。
特に英語力を補って余りある専門知識や日本語能力がないのであれば、なおさらTOEIC900点を取った方がいい。
この記事では僕がそう考える理由について書いています。
翻訳者になるのにTOEIC900点はあった方がいい理由
翻訳の仕事を取りやすくなる
TOEICの点数があった方が仕事を取りやすいです。
以下は日本翻訳連盟のWebサイトに掲載されていた翻訳求人情報です。ある翻訳会社によるフリーランス翻訳者向けの募集要項に、英語力の基準として「TOEIC900点を目安とする」とあります。
(出典:日本翻訳連盟 翻訳求人)
翻訳会社がフリーランス翻訳者を募集する場合、ほとんどは経験者が対象です(この求人情報もそう)。ただ未経験であったとしても、TOEICの高得点所持者なら応募できる求人もたまにあります。
また派遣社員や契約社員としてオンサイトで翻訳する求人に応募する場合は、なおさらTOEIC900点を持っていた方がいいです。
なぜなら募集元は自分たちでは翻訳できないから外注するのであって、翻訳のスキルを測ることができません。そうなるとTOEICなどの資格に頼りがちになります。
翻訳未経験者がTOEIC高得点をもっていれば、それだけチャンスが広がります。
TOEICと翻訳スキルはある程度関係ある
翻訳者志望の人でTOEICについて聞いてくる人は、以下のどちらかです。
- TOEICの点数が低い
- TOEICを受けたことがないが、受けても高得点を取れる自信がない
英語力がないか、あるいは英語力に自信がない人が「TOEICと翻訳は関係ない/関係ある」とか、さらには「TOEICと英語力は関係ない/関係ある」とか、そういう意見に触れて、翻訳の勉強をすればいいのかTOEICの勉強をすればいいのか分からなくなって・・・
それで「TOEICって受けました?何点ですか?」という質問につながっているように思います。
受けたことがなくても、受ければ高得点を取れると思っている人は、TOEICについての質問はしてきません。
この記事を読んでいる方で、もし「英語力がなく、かつ英語力に自信がない人」に該当するのであれば、翻訳以前の問題なのでさっさと英語力を鍛えましょう。
ちなみに「TOEICと翻訳は関係ない」という意見もたまに見るけれど、僕は無関係ではないと考えています。
たしかにTOEICでは翻訳力は測れません。でもリスニング力とリーディング力の基礎は測れます。
リスニング力とリーディング力は当たり前のように英語力の一部なので、翻訳力と英語力が関係あるのであれば、っていうか関係あるので、「TOEICと翻訳は関係ない」なんてことはないです。
「TOEICと英語力は関係ない」という意見もそう。繰り返しになりますがリスニング力とリーディング力は英語力の一部。TOEICと英語力は関係があります。
ここまで読んで「よし、TOEICを勉強しよう/受けよう」と思ってくれたとしたら、受験テクニックを磨くのではなく「英語力を鍛える」ためのTOEIC受験にしてください。
英語の勉強にTOEICの教材を使う、くらいの感覚がいいと思います。
TOEICの文法問題にマニアックな出題はなく、リーディングもリスニングも特に珍しくもないシチュエーションから出題されます。
基礎力をつけるには試験として便利だし、この程度の問題ならテクニックに頼ることなく正面突破できる英語力がないと、翻訳するには心許ないです。
TOEICのリスニングパートはどうする?
リスニングのことを書く前に。
まずはリーディングの勉強に集中してください。
文法問題は落とさない。長文読解も時間内に終わるのは当然で、見直しの時間も確保する。
TOEICのリーディングパートでケアレスミス以外で落とすようなことがあると、翻訳者になってから苦労します。
リーディングパートで満点近く取れるようになれば、リスニングでもある程度得点が取れるはずです。
なぜそんなことが言えるかというと、リーディングを時間内に解き終わるということは、きちんと返り読みせずに読めているからだし、英語の語順(≒英語の発想)がある程度頭に入っているに違いないからです。
英語の発想が頭に入っていれば、リーディングとリスニングの違いは「英語が目から入るのか耳から入るのか」の違いだけ。
もしリスニングが出来ないとしたら、音が取れていないからだけなので、リーディングパートの音声でも使って、ディクテーションしてオーバーラッピングしてリピーティングして音読してみてください。
公式の問題集にはリーディングの音声もついているし、ダウンロードもできます。
(2021年9月時点での最新版は「公式TOEIC® Listening & Reading 問題集 7」)
まずはリーディングパートで満点近くとりましょう。その時点でリスニングと合計で900点超えていなければ、このやり方でリスニング力を鍛えてください。
なぜ900点?800点台じゃだめ?
ただ見栄えの問題です(笑)900点だと見栄えがいい。
消費者心理を考慮した価格設定と同じです。3,000円より2,980円の方がかなり安く見えますよね。実際には20円しか変わらないのにです。
890点より900点の方がすごく英語力があるように見えます。たった10点しか変わらないのに(一方で920点と930点を比べると、大した差ではないように思えません?)。
履歴書や職務経歴書でのインパクトも同様、900点の方がすごく見えます。
それに「TOEIC何点?」って聞かれて、「900点はあります」って返せるのもポイント。
TOEIC860を超えるとレベルAらしいですが、「TOEICのレベルは何ですか?」なんて聞かれないですから。
ちなみに募集要項に「TOEIC800点以上」ってなっている求人もたまに見かけます。
「じゃTOEIC800点でもいいじゃん」と思うかもしれませんが、
ただ翻訳求人はそもそもそんなに数が多くないので、そうした求人に900点台の人が応募してくるかもしれないし、未経験の場合は他に翻訳適性を判断できる材料がなおさら少ないので、TOEICで足切りされる可能性もあります。
ということで、900点くらいは取りましょう。
そして900点超えたら一切TOEICやらなくていいです。そこから上を目指すのはコストパフォーマンスが悪いし、前述の通り、大した差ではないよう見えるからです。
900点未満なら履歴書や職務経歴書には書かない
900点を達成していなかったとしても、チャレンジしてみたい翻訳の仕事が見つかる場合があります。
900点に未到達の時点で応募する際は、その仕事の募集要項にTOEICについて記載(たとえばTOEIC〇〇点以上必須とか)がない限り、履歴書や職務経歴書にTOEICの点数は書かない方がいいです。
だいたいの場合は、書類選考が通過した後にトライアル(少量の翻訳をして、実力をみるためのもの)があります。書類に記載するTOEICの点数が中途半端な点数だと、書類選考で落とされてしまう場合があります。
仮に翻訳の学校に行って勉強を重ね、翻訳力を身につけていたとしたも、
「ん?TOEIC800点台?」
なんて目をつけられて落とされてしまってはもったいないです。
TOEICの点数を使わずに、自分がその仕事に適性があることをアピールしましょう。
さいごに:TOEIC900点はスタートライン
TOEICは翻訳スキルの一部分しか測れません。だからTOEIC900点あるからって翻訳者になれるとは限らないし、現役の翻訳者でTOEIC900点をとっていない人だっているかもしれないです。
(ちなみに僕は一人しか知りません。その人はTOEICは受けたことがないのですが、米国大学卒で米国公認会計士です。スキルを証明するにはそれで十分ですね)
TOEIC900点は翻訳者になるのに必須ではないけど、それでもあった方が楽だし、900点くらいの英語力はないとね。
受ければTOEIC900点取れる英語力はあくまでスタートライン。
TOEIC900点を取った上で実務経験を増やしていき、翻訳スキルをしっかりと身につければ書類選考で落とされることはなくなりますよ(経験済み)。
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